2009年7月20日月曜日

7.大森曹玄老師 2

それは夏休みのことだった。師匠寺の住職である宗覚師の親族の法要が東京であり、小僧である私も手伝いで連れて行かれることになった。
その際に僧侶でもあった成瀬教授が、宗覚師の脇導師として同行した。これを機会に東京にいる大森老師をお訪ねしようと成瀬教授が先方に手紙を書いておいてくれた。私の初めての上京である。

法要の手伝いを終えた私は、成瀬教授と兄弟子に伴われて中野の高歩院を訪れた。午後二時の約束だったと記憶している。まず奥方の書院に通された。
老師は外出中で、そこで私たちは二十分ほど待たされた。そして老師が現れたとき、約束の時間に遅れたことを老師が私たちに丁寧に詫びたことが印象的だった。
私たちのような若造に対して、まるで偉ぶるところのない人柄に、感銘を受けたのだ。 

書院では老師と成瀬教授が禅の話などをしているのを、私は脇で静かに聞いていた。話が一段落したところで老師は私の方を向き、私が持っていた防具入を見て「剣道の稽古をされてきたのですか」と尋ねられた。そのときその防具入に入っていたのは法要のための仏具だったので、私はそう答えた。

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