2009年7月21日火曜日

7.大森曹玄老師 3

私たちは禅堂に案内され、そこで老師に「法定(ほうじょう)」の形を見せていただいた。この形は直心影流剣術の基本で、八相発破、一刀両断、長短一味の四本があり、それぞれが、春、夏、秋、冬の大自然の運行を表している。
小柄な老師が太く独特の形をした木刀を持って見せてくれた演武形は無駄な動きひとつなく、およそ二十分のあいだ私は老師の動きを食い入るように見つめていた。
演武を終えた老師は、私に「丹田を鍛えなさい」と言った。

次に直径十センチほどの大きな筆を取り、広げた新聞紙に書をしたためて見せてくれた。それから私たちにも筆を取らせ「書いてみなさい」と言った。
その時なんという文字を書いたかは覚えていないが、老師に「あんまり上手くないねぇ」と笑われたことを覚えている。

私は最後に老師に「剣を学ばせてください」とお願いした。
それから長年に渡って、折を見ては中野の高歩院に通って剣を学ぶことになる。
それはこの初めての出会いから、老師が九十歳で遷化(せんげ)するまでの十数年に及んだ。私の荒れた邪剣を正してくださったのは大森曹玄老師だ。大森老師からは謙虚であることの大切さも学んだ。

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