2009年7月10日金曜日

2.仲間たち 4

三部とよばれるのは私のような一般学生だった。一般学生といっても曲者ぞろいだった。寮で同室だった吉本(仮名)は元自衛官だった。 当時二十代半ばだった彼は背が高く筋骨隆々としていて、無口だった。この吉本君には、かの先輩の岡野(仮名)も一目置いていた。なぜなら一度殴りかかろうとして、逆に投げ返されてしまったことがあるからだ。聞けば極真空手の有段者だという。自衛隊でレンジャー部隊の教官をしていた彼がこの大学にやってきた所以はこうだ。新宿の歌舞伎町でやくざ五人を相手に喧嘩をし、相手を半殺しの目にあわせたせいで自衛隊を懲戒免職処分となる。
そして行き場のないまま彷徨しているときに、なにかの縁で逸外老師に出会い、そのままここに連れてこられたのだという。

一般学生の中には知的障害のあるものもいた。 九州の綱元の息子だという彼がこの大学に来た理由はわからなかったが、逸外老師は来るものを誰も拒まず、とくに我々のような風変わりの者を殊の外かわいがった。

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