2009年6月20日土曜日

14. 不思議な炎 2

その岩場で不思議な光景を見た。青白い炎がいくつも揺らめいて空中に浮かんでいた。 見た瞬間、人魂(ひとだま)だと思った。それはお盆の時期だった。
後で思い直して、あれは地下から燐(りん)が染み出して燃えていたのではないかと思った。

山には鉱物が沢山あった。山師だった祖父が、青白いところを目指していくと鉱脈にぶつかるという話をしたことがあった。それが見えるのは暗い時間だったので、祖父が山に入るのは決まって夜だった。昔の修験者も、あの青白い炎を目指して鉱山を探したに違いない。

山には死者の霊がいると古くから信じられてきた。
青白い炎を人魂だと思ったのは、お盆の時期だったせいだけでない。以前、同じ場所で、不思議なものと遭遇した経験があった。

2009年6月19日金曜日

14. 不思議な炎 1

沢沿いの道を登りきったところに、岩から水の染み出すところがあった。
手で水をすくい少しだけ口に含んで渇きを癒す。山登りをしている最中はゴクゴクと沢山飲むと、かえって疲れが増すので、喉を湿らす程度がちょうどいい。

山水が出る場所から先は、広葉樹の森になった。枝葉が空を覆い隠し、夜は星の光も差し込まず、昼間も暗い。地面の植生も変わり、普通の笹ではなく、熊笹があらわれるようになった。山の斜面に大きな岩があらわれ、しばらくすると不動の岩屋にたどりつく。不動の岩屋を少し登ったあたりに巨石軍が並ぶ場所があり、よく動物たちの姿をみた。カモシカの群れを見たのもその場所であり、サルの群れも良く見た。

2009年6月14日日曜日

13. 深夜の儀式 3

早足で十分ほど歩いて高賀神社にいき、手水場で手と口を清め、祭礼の儀式をおこなう。法螺の儀を唱え、法螺貝を吹く。護身法を切り、すり念珠をして、三礼をする。二礼二拍一礼をし、天地清之祝詞を上げ、般若心経を一巻、本覚讃を一遍、四弘誓願文を三遍、総回向文を一回唱え、ふたたび二礼二拍一礼をし、三礼をして、法螺の儀を唱える。

高賀神社のとなりにある収蔵庫には、蓮華峯寺にあった仏像が安置してある。中に入り、法螺の儀を唱え、三礼をし、護身法を切り、すり念珠をして、懺悔文を唱え、開経偈、大日如来真言を七遍、薬師如来真言を七遍、阿閦如来(あしゅくにょらい)真言を七遍、阿弥陀如来真言を七遍、観世音菩薩真言を七遍、虚空蔵菩薩真言を七遍、般若心経を一巻、光明真言を七回、本覚讃を一遍、四弘誓願文を一遍、回向文を一回唱え、三礼をして、法螺の儀を唱える。
それから高賀神社の近くにある登山道から、午前三時半ごろ登頂を始める。