その岩場で不思議な光景を見た。青白い炎がいくつも揺らめいて空中に浮かんでいた。 見た瞬間、人魂(ひとだま)だと思った。それはお盆の時期だった。
後で思い直して、あれは地下から燐(りん)が染み出して燃えていたのではないかと思った。
山には鉱物が沢山あった。山師だった祖父が、青白いところを目指していくと鉱脈にぶつかるという話をしたことがあった。それが見えるのは暗い時間だったので、祖父が山に入るのは決まって夜だった。昔の修験者も、あの青白い炎を目指して鉱山を探したに違いない。
山には死者の霊がいると古くから信じられてきた。
青白い炎を人魂だと思ったのは、お盆の時期だったせいだけでない。以前、同じ場所で、不思議なものと遭遇した経験があった。
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