2009年7月30日木曜日

10. 公案 2

私は
「隻手(せきしゅ)の音声(おんじょう)です」と答えた。
これは、両手をバンと鳴らしたときに右手と左手のどちらが鳴ったか、を問うもので、初関(初めて授けられる公案)として、よく使われるものだ。
逸外老師は、
「私も公案を授けよう」と言い、
「趙州(じょうしゅう)和尚。因(ちなみ)に問う。狗子(くし)に還って仏性ありやまた無しや」
と問われた。
これは「趙州の無学」といわれる公案で、趙州和尚に弟子が
「犬にも仏性があるでしょうか」と訊き、
和尚が「無」と答えたという話である。
私は逸外老師に頂いた公案を持って翌日から参禅し、師匠の宗覚師に、
「犬には仏性はありません」
と答えると、宗覚師は、ガハハッ、と笑われた。
また翌日参禅し、今度は
「犬に仏性はあります」
と答えると、宗覚師は大声で笑われるばかりだった。
ひと月後に逸外老師がお見えになった。私は自分の答えを逸外老師にぶつけた。
老師は、むっと口を閉じたまま、何もお答えにならずにそのままどこかへ行ってしまわれた。

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