泉で閼伽水を汲んで、高賀渓谷にむかうのが午前一時を過ぎた頃だ。
渓谷にかかる橋には、深夜にもかかわらず、私を見ようと集まった見物客が何人もいた。
岩場で着ていた作務衣を脱ぎ、ふんどし一枚の姿になる。 法螺貝を吹き、川に向かって三礼をする。護身法を切り、すり念珠をしてから、龍神大菩薩の真言を七回、八大龍王の真言を七回、不動呪を七回、光明真言を七回、唱える。それから水に浸かる。夏の禊は行水のように心地よい。
川原でキャンプをしている若者たちが私に気づき、近寄ってくる。
彼らはふざけて奇声をあげながら川に飛び込むと、私のそばで私が結ぶ印をまねた。
私は早口で般若心経を三遍唱え、川を出る。
それから、川に入るときとおなじように、龍神大菩薩の真言を七回、八大龍王の真言を七回、不動呪を七回、光明真言を七回、唱えた。
ふたたび三礼をし、法螺貝を吹く。
それから持ってきた修験装束に着替えると、午前二時ごろになる。
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