2009年6月30日火曜日

18. 宿命 2

山の水が名水であると聞き及んだ船戸氏は国の林業構造改革事業の一環として、板取川の近くで天然水を汲み上げ、ペットボトルに入れて「高賀の森水」として売り出した。
その水は、シドニーオリンピックにおけるマラソン金メダリストの高橋尚子選手が愛飲したことで、話題になった。その後、高賀神社の手前に井戸を掘り、百円の初穂料を取ることで水を汲ませた。
「神水庵」と名付けられたその場所には、毎年二十万人が訪れるという。その場所は泉があった場所から数百メートル離れたところだった。

船戸氏が村全体の利益を考えていたことは間違いない。しかし、なにかが山の怒りにふれたのか、その後、車を運転中に山道のカーブでハンドルを切りそこない他界してしまった。
洞戸村は市町村合併によって、関市に組み込まれた。 村がなくなることによって武藤村長も引退を余儀なくされ、高賀修験復興の機運も萎んでいった。
そんな折に、私に大阪の寺で住職にならないかという話が持ち込まれ、受けることにした。

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