弟子をとらない人だった。もしかしたら、私が唯一の弟子かもしれない。
ある日、修法(しゅほう)を教えようと言われ、四度加行(しどけぎょう)を授けられた。それから私の密教修業が始まった。最初の訪問から半年過ぎた頃のことだ。
密教の修法は、すべて口伝えである。孔雀明王法、北斗護摩など、あらゆる真言密教の奥義を、この阿闍梨から手取り足取り伝えられた。山に入り、斧で木を間引いてきて、自分で護摩木(ごまき)を作らされた。私はこの山で八千枚の護摩を焚いた。阿闍梨は一週間で十万枚の護摩を焚いたこともあるという。修業は阿闍梨が遷化されるまでの五年間に及んだ。私はこの阿闍梨から得度受戒を受けている。
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