托鉢行とは乞食行(こつじきぎょう)ともいい、家々を巡って生活に必要な最低限のお布施をもらい、人々に功徳を積ませる修業のことをいう。慈悲の心がなければ乞食(こじき)とかわらず、実のところ、僧を装った乞食も珍しくない。私は臨済宗で得度をした僧として袈裟を着ていたが、野宿をすることも多く袈裟は汚れていた。そんな旅の中で、人々の人情に触れることも多くあった。
特に人情の厚い場所として記憶しているところに、下呂温泉がある。
定食屋の店先に立つと中に招き入れてくれ食事を振舞ってくれた。
ある大きな旅館の女将が、無料で一番良い部屋に泊めてくれたこともあった。
下呂には水明館という老舗の旅館があり、ここの主が先祖代々正眼寺の檀家で、私も雲水時代に仲間と一緒に托鉢したときに何度も投宿させてもらった。
そのように信仰の厚い土地柄であるのだろう。
また温泉街にはそれぞれに事情を抱えて流れてきた人たちが多く働いていて、余所者(よそもの)に寛容な風土があったため、下呂温泉には何度か訪れた。中山道の旅情も素晴らしかった。
旅を続けるうちに人情に溢れる場所は日本中いたるところにあることに気づかされた。
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