網代笠を被り、黒染めの麻衣を着て、肩から頭陀袋(ずだぶくろ)を下げ、手甲で覆った手に錫杖を持ち、脚半を付けた足には梱包用のビニール紐で編んだ草履を履いていた。
「ほおーっ、ほおーっ、ほおーっ」
大きな屋敷の玄関前で読経をしていると、屋敷の中からギャンギャンとドーベルマンの吠える声が聞こえてきた。
しばらくすると中から屋敷の主人が出てきて、私の顔を見るなり、
「なんだ、きったねぇ坊主が立っておって。帰れ、帰れ。」と言った。
途中で読経を止めるわけにもいかず早く終えて立ち去ろうと思っていたところで、私は水をぶっかけられた。
私は濡れた袈裟から水を滴らせながら、その屋敷から離れた。
観光地で土産物屋の店先に立っていると、店主に、「商売の邪魔だから他所に行ってくれんか」と追い払われることもたびたびだった。
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