西国三十三箇所の巡礼を終えた私は、一月から五月まで北海道から東北を廻る。
そして、恐山を最後に一年の托鉢の旅を終えた。
旅を終えた私は、経営コンサルタントの看板を掲げて事業を始めた。私は剃頭(ていはつ)した頭に背広を着た。主な仕事は人材育成である。私のビジネスセミナーは、とてもユニークだと評判になり、仕事は順調に増えていった。
私が旅でであった老僧の隠居寺の門を叩くのは、華厳寺での出会いから半年以上たってからのことだ。老僧が住んでいたのは、裏高野山の廃寺同然のボロ寺だった。
明治生まれというから当時の年齢は八十歳を超えていただろう。
背は高かったが、痩せていた。
親しく話をすると、この方は高野山で修業をされた大阿闍梨(だいあじゃり)であることがわかった。当時すでに真言密教に関心があった私は、仕事が休みの日を利用して、この寺に通うようになる。
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