2009年8月17日月曜日

出会い 2

十二月の終わりに、三十三箇所の旅を区切る華厳寺(けごんじ)を訪れた。
お参りを終え参道を下っていく頃には、太陽がすでに傾き始めていたと思う。
土産物屋が並ぶ道を抜け、なおも続く参道を歩いていると、黄色い衣を着た一人の年老いた僧が、大きな石の上に腰をかけて休んでいるのが目に入った。
その老僧は、持っていた錫杖に寄りかかるようにして寝ているように見えた。
私が老僧の前を通り過ぎるときに合掌をすると、目があった。
その老僧はゆっくりとした動作で、私に合掌を返した。私は一礼をして通り過ぎた。
通り過ぎてからも、その老僧のことが気になり、しばらくして後ろを振り向いた。
その老僧は私を見ていて、おもむろに腕を私の方角に伸ばして、手招きをした。
私は引き返した。その老僧の脇に腰を下ろすと、私を見てやさしく微笑んだ。
私が網代笠(あじろがさ)を取ると、老僧も取った。
その風貌は痩せた顔に七福神の中の寿老人(じゅろうじん)のような髭を生やし、五分刈りの頭は白髪で、大きな福耳をしていた。

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