2009年8月7日金曜日

12. 流転 4

幼い頃の私にとって、父は誇らしい存在だった。羽振りのよかった時代の父は、よく興行で三波春夫氏をよんだ。その三波春夫氏の膝に抱かれた記憶がある。私はお坊ちゃんとして優雅な幼少時代を過ごした。
結局、父がヤクザにならざるをえなかったように、私は僧侶になるしかなかったのだ。サラリーマンをしながら、私は天台宗で修業をして僧侶の資格を得た。
会社の経営に関わっていた頃は、長期の休みを取って山歩きをした。白山で「こうか」の声を聞いたのも、その頃のことだ。私の心は次第に、修業に専念したいという思いにとらわれていた。ある日、経営する販売会社の社長と経営の方針をめぐり対立し、私は辞任することになった。その際、自分の所有する株をすべて社長に買い取ってもらった。それから私は一年間の托鉢の旅に出た。

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