2009年8月2日日曜日

11. 結婚 1

谷耕月師は、その後も正眼寺に来ることを勧めてくれたが、そのことを宗覚師は快く思わなかった。子供がいなかった宗覚師は、私に自分の寺を継がせようという思いもあったようだ。 
私は大学を四年生の秋に中退してしまった。その後の自分の進むべき道を探しあぐねていたときに、谷耕月師の薦めがあって、ある全寮制私立高校の教師兼寮監として赴くことになった。それは生前の逸外老師が私のために用意してくれた道でもあった。逸外老師は遷化される前に私に「住職にならずに、僧侶になりなさい」と言い残していた。
私自身も修業はつづけたいと思っていたものの、どこかの寺に収まってしまうことには魅力を感じていなかった。正眼寺大学で人生を変えられるほどの体験をしたと思っていた私にとって、正眼寺大学と同じように人間を作るという理想を掲げた全寮制の高校で教鞭を取ることは打って付けに思えた。
高校で教師を始めてからすぐに私は今の家内との結婚を決めた。結婚することを宗覚師に申し出たときに、師匠はへそをまげてしまって結婚式にはでないと言い出した。私は困ってしまった。

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